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「ありゃ? アルネ坊ちゃんも、ご一緒かい?」  何と、この鍛冶屋はアルネを親し気に、そう呼ぶのだ。 「アルネ……坊ちゃん……?」  自分を知った風の鍛冶屋に、アルネは記憶の糸をたどった。 「……ロビーおじさん!?」 「覚えててくれたんだな。嬉しいぞ!」  二人のやり取りに、今度はエディンが驚いた。 「アルネとロビーは、知り合いだったのか?」 「僕、小さい頃はよくお城を抜け出して、城下街へ遊びに来てたんです」 「アルネ坊ちゃんは、俺の働きっぷりを褒めてくれたもんだよ」  軽く昔話をした後、エディンはロビーと出発の日時を打ち合わせ、彼に手入れを任せていた愛用の長剣を受け取った。 「見事だ。まるで、生き返ったように輝いている」  戦いで、幾多の骨肉を裂き、血をすすってきた、エディンの呪われた長剣。  それが、清らかな産声を上げているかのようだ。 「すごい! エディン様、その剣を持たせてくれませんか?」  アルネは無邪気に、そう願った。  しかし、途端に竜将の表情が曇った。  ためらい、考え、そして。 「いや、それは断る」  珍しく拒否してきたエディンに、アルネの心は不安に覆われてきた。

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