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第十六章 剣と鞘
エディンの辛い過去を、また一つ知ったアルネ。
それは、我が事のように胸を締め付けた。
しかし、そんな彼に、鍛冶屋のロビーはささやいた。
「ああ見えて、竜将閣下は優しい男だぜ」
「どうして、そう思うのですか?」
「うん。剣だけでなく、鞘も大切に手入れなさってるからな」
「そういえば。さっき手にした時、僕もすごく綺麗だと感じました」
「だろう? ああいう男は、己が剣だ。パートナーになる鞘を、大事にする」
だから、アルネ坊ちゃん。
そこで鍛冶屋はニヤリと笑った。
「閣下をしっかり捕まえて、逃がさないようにするんだぜ!」
「さっきから、何をごちゃごちゃ言ってるんだ!」
エディンの悲鳴に似た叫びに、ロビーは笑った。
彼の声は大きいので、そのささやきも全部聞こえていたのだ。
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