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「あっ。『エヴァ・リーン』って……もしかして」 「どうした。知った店か?」 「はい。母が若い頃に働いていた、カフェだと思うんです」 「なるほど。入ってみようか」 「いいんですか?」 「ちょうど、喉が渇いたと思っていたところだ」  エディンは馬から降り、手綱を引いて店の裏手に括り付けた。  それからアルネを下ろし、二人でカフェのドアを開け、中へと入った。  レンガ造りの小さなカフェだが、観葉植物でみずみずしく彩られている。  そこにコーヒーの香ばしい匂いが漂う、落ち着いた雰囲気を持つ室内だった。 「いい感じの店だな」 「はい……あっ!」  何かを見つけたのか、アルネは引き寄せられるように、カウンター席へ向かった。

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