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「いらっしゃい。何にしましょうか?」
ひょろりと背の高い、だが声はやたらと低い男性が、この店のマスターらしかった。
「あ、あの。僕、その飾り棚にある……」
アルネは真っ直ぐに訴えようとしたが、それをエディンが柔らかな響きで遮った。
「店主。この店のお勧めは?」
「コーヒーです。一昨日、良い豆がたくさん入りましたから」
「それを、二つ頼む」
「かしこまりました」
マスターは、コーヒーを淹れる準備に入ってしまった。
エディンはアルネに、椅子に掛けるように促し、少々不満げな彼に教えた。
「何か尋ねたいことが、あるんだな? そういう時は、まず店に金を落とすといい」
「あ……確かに、そうですね」
目の前しか見えていなかった自分を、アルネは恥じた。
身を縮めて、エディンをそっと見上げる。
(やっぱりエディン様は、大人なんだな)
アルネの隣にいるのは、堂々とした頼もしい男だった。
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