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アルネが親しみやすい声音で話しかけたので、カフェのマスターは少し安心したようだ。
ゆっくりと立ち上がり、再びカウンター越しに向き合った。
ちらりと横目でエディンを見ると、彼は相変わらず満足そうな表情で、コーヒーを飲んでいる。
「するとまさか、こちらの御方は。あの……名高い……竜将閣下?」
「そうです。テミスアーリンを救ってくださった、ネイトステフの……」
アルネの返事を聞き終わる前に、マスターは再びしゃがみ込んでしまった。
「数々のご無礼、どうかお許しいただきたく!」
これでは、母の若い頃の話を聞くどころではない。
困ってしまったアルネは、コーヒーを楽しむエディンを見た。
どうしたらいいでしょうか?
彼のそんな顔つきに、エディンは優しく微笑むと、カウンター向こうで小さくなっているマスターに、話しかけた。
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