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「とても美味いコーヒーだ。お代わりを、もらえるか?」
「え? あ、はい!」
「それから、これに合う菓子があれば、二人分」
「かしこまりました!」
バタバタと動き始めたマスターの背中に、エディンはさらに声を掛けた。
「急ぎではないので、ていねいに淹れてくれ。さっきと同じくらいにな」
「は、はい」
目に見えて落ち着きを取り戻したマスターに、アルネは感心していた。
「さすがは、エディン様。人を動かすことが、お得意なんですね」
「あまり褒められたことでは、ないが。軍を率いて、兵の士気を挙げる時に……」
そこでエディンは、は、と動きを止めた。
「今の言葉は。アルネ、私を褒めてくれたのか? そうだな?」
「えっ? そういえば、そうですね」
こくりとうなずき、アルネはエディンの髪に触れようとしたが、やめた。
店内には、他の客もいる。
人前で頭を撫でて、よしよし、など、エディンの誇りに傷がつくだろう。
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