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「エディン様。手を、いいですか?」 「こうか?」  カップを置き、エディンは片手をアルネに差し出した。  するとアルネは、彼の手のひらを両手で包み、軽く上下に揺すった。 「とっても、すごいことです。さすがは、エディン様です!」 「う、うむ。そうか? うん」  温かなアルネのぬくもりが、無骨な手に伝わってくる。  エディンは瞼を伏せて、それを味わった。 「ありがとう、アルネ」 「いいえ。僕の感謝の気持ちです」  ……ああ、いっそこのまま。 (ずっと、手を握っていて欲しい!)  しかしそれは、舞い戻ってきたマスターによって阻まれた。 「お待たせいたしました。コーヒーのお代わりと、当店手製のチーズケーキです」  アルネの手は、するりとエディンから離れていった。  しかし、その熱はエディンの心を確かに熱くしていた。

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