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第十八章 昔語り
エディンは、マスターに用意させた二杯のコーヒーのうち一杯を、アルネではなく彼に勧めた。
「いえ、私は仕事中ですので!」
「私の奢りが、飲めないとでも?」
しかも蜂蜜酒を出させ、そのコーヒーにたっぷりと入れたのだ。
「仕事中に、酔うわけには!」
「私の奢りが、飲めないとでも?」
結局マスターはエディンに圧される形で、酒の溶けたコーヒーを飲んだ。
一杯、二杯、三杯と、エディンは蜂蜜酒入りのコーヒーを注文し、その都度マスターにも勧める。
しまいには、酒の入ったコーヒーではなく、コーヒーを少し落としたカクテルのような飲み物になってしまった。
チップを出されたことで、アルネの母が王室へ入ったいきさつを話さねばならない、とは感じていたマスターだ。
ためらいはあったが、アルコールの力も手伝って、語り始めた。
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