87 / 372

2

「アミエラ王妃は、誰にでも優しく親切でした。そんな彼女に想いを寄せる人間は、大勢いました」  おかげさまで、こんな小さな店でも繁盛していたのですよ、とマスターは苦笑いした。  髪に白いものが目立ち始めている彼も、当時はアミエラに憧れていたと言う。  彼女は、誰をパートナーに選ぶのか?  それは、この界隈に暮らす人々の、関心の種だった。 「しかしまさか、国王陛下が彼女を射止めるだなんて、思いませんでした」  きっかけは、国王がこのカフェへ立ち寄ったことだった。 「最初は、お付きの方が慌てて入ってこられたのです。陛下が、急に体調を崩された、と」  お忍びで城下街を視察していた国王だったが、その最中に暑さで具合が悪くなってしまったのだ。

ともだちにシェアしよう!