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国王だけでなく、周囲にいたお付きの者も、びしょ濡れになってしまった。
『ぶ、無礼者! ここにおられる御方を、どなたと……』
『暑さにやられたなら、これが一番よ! ほら、もう一杯!』
『うわぁあ!』
しかしアミエラの荒療治は、即効性があった。
やや回復した国王は、その後カフェによろめきながらも立ち寄り、丁重な介護を受けることができたのだ。
「アミエラの判断力と行動力。そしてその後の献身的な看病に、陛下はすっかり惚れ込んでしまったのさ」
「アルネは、母上の血を色濃く受け継いでいるのだな」
「どういう意味ですか」
「褒め言葉だぞ?」
「そうかなぁ?」
昔語りのマスターは、今やすっかり酔ってしまった。
敬語も忘れて、ただ思い出に浸っていた。
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