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「アミエラは陛下に求愛されて、悩んでいたよ。なにせ、第二夫人。正妻じゃないからね」  それでも、国王は彼女を望んだ。  政略結婚で、異国の王室から嫁いできた妻には無い魅力を、アミエラに見出していたからだ。 「結局、アミエラは国王のプロポーズに、心を動かされたんだ」 「どんな言葉だったんですか?」 『私の支えになって欲しい。この国を、より良くするために、力を貸して欲しい』 「父上らしいな。ちょっと、ロマンに欠けます」 「いや、私は陛下に激しく同意する」  エディンやアルネは、そんなことを言い合っていたが、マスターは最後にポツリとこぼした。 「アミエラ……幸せになれたのかな……良い人生を、送ってるのかな……」  彼はそのままカウンターに突っ伏して、眠ってしまった。  若い頃の夢を見に、瞼を閉じた。

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