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第十九章 宣言
「僕、驚きました。母上と父上の出会いに、あんなことがあったなんて」
「アルネの母上は、情の厚い素晴らしい御方だ」
エディンとアルネは城下街から城へと戻り、休息を取っていた。
これまで知らずにいた、父と母のなれそめに、アルネは目を輝かせている。
そんな彼を笑顔で見守りながら、エディンは腹を撫でていた。
「驚いたことが、もうひとつ。エディン様が、あんなにコーヒーをお代わりなさるなんて」
「さすがに、少し飲み過ぎた……」
「マスターから昔話を聞き出すため、ですよね。ごめんなさい」
「気にするな。途中からは、酒になったし」
それはそうと、とエディンはアルネに訊ねた。
「国境を越えた旅に出ることは、母上にお話ししたのか?」
「いいえ。これ以上、心配をかけたくないので」
エディンは、そうか、と口元だけで小さく応えた。
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