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「では、兄上には? 仮王陛下には、伝えたか?」
「はい。さすがに、誰にも内緒で国を出るわけにはいきません」
「それなら、いい」
「ただ……」
朗らかだったアルネの表情が、ふと曇った。
(どうしよう。これは、僕たちテミスアーリン王族の問題だし……)
アルネは、兄が語った不安を、エディンに相談するか迷った。
『国境を越える、ということは。しばらく会えないのだな?』
『はい。兄上ひとりに内政をお任せするのは、心苦しいのですが』
『正直に言えば、今はアルネに行って欲しくない』
『兄上……?』
『不安なんだ。父上亡きあと、私が仮王として振舞ってはいるが、まだまだ未熟だ』
『ごめんなさい、兄上。でも、母上がひどく辛そうなので』
『フェリックス殿下もご一緒となると、国内の統制が維持できるかどうか……』
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