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 アルネは両親の出会いを知り、母の情熱的な一面を垣間見たのだ。  そして、胸に火が点いた。 「それに。兄上があんなことを、おっしゃるから……」 『ダマビアへの行程は、決して楽ではない。命を落とすかもしれないんだぞ、アルネ』 『覚悟の上です』 『止めても無駄か。では、悔いの無いようにな』 『悔いの無いように……』  悔いの無いように。  そう。 「悔いの無いように、僕は生きるんだ。たとえ命を落とすことになっても、悔いの無いように」  その一歩が、エディンとの一夜だった。  あの方になら、この純潔を捧げてもかまわない。 「ううん。僕が、エディン様に捧げたいんだ」  そう考えるまで、アルネの想いは募っていた。

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