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自室で、エディンは物思いにふけっていた。
「アルネがわざわざ私の部屋へ来てくれるのは、彼の心遣いだ」
もし逆だったら、国同士の厄介な懸案に発展しかねない。
『ネイトステフ王国のフェリックス王子が、テミスアーリン王国のアルネ王子の純潔を奪った』
こう、曲解される恐れがあるのだ。
エディンが夜にアルネの部屋に忍び込み、弄んだ、という風に。
「賢く、そして優しい子だ……」
そうつぶやき、エディンは初めて彼の肖像画を見た時のことを思い出した。
まるで、地上に舞い降りた天使。
「その清らかな天使の羽を、もいでしまってもいいのか?」
エディンは、この期に及んでまた迷いだした。
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