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 仮王であるアルネの兄が、目を輝かせて唱えたその名前。 『フェリックス・エディン・ラヴィゲール』  冷徹勇猛な、異国にまでその名を轟かせる竜将。 「でも、ずいぶん長いお名前ですから、呪文みたいだ、って思ったんです」  そして。 「そして、そのお名前を口にすると、不思議と心が落ち着きました。勇気と希望が、湧きました」 「それは、名誉なことだな。どんな勲章より、嬉しい」  だから僕は、苦しい時や辛い時には、心の中でエディン様のお名前を、呪文のように唱えました。  そう、アルネは語った。 「抜け道の中で将軍に追いつかれ……辱めを受けようとした時も」  エディンは、思い出した。  美しい天使を汚そうとする将軍を、背後から有無を言わさず刺し殺した。  本来なら、後ろからの不意打ちは、武人の心得に反するところだ。  だが、エディンは後先考えずに、アルネを救ったのだ。

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