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「あの時は……すまなかった。その肌を、血しぶきで汚してしまったな」 「大丈夫、少しでした。それに、エディン様がマントを羽織らせてくださいました」 「正直なところ、私は頭に血が昇ったのだ。君が、その……凌辱されそうだったので」 「おまじないの効果は、抜群だったんですね。まさか、ご本人が助けてくださるなんて」  エディンは、そんなアルネを抱き寄せた。  辱めを受けそうになった状況を、しっかり乗り越え今を生きる。  彼の、王子らしい心の強さに、胸を打たれた。  しかし一方で、こうも感じていた。 (強い。アルネは、強い子だ。だが、強いがゆえに、ポキリと折れそうな危うさがある)  しかも、この先にダマビアへの旅が待っている。  過酷な行程に、彼の心が折れなければいいが。  それを越えたら、帰国するカテリーナ妃との攻防が待っている。  高貴な者同士の、心理戦だ。  王妃の策略に、アルネの心が壊れなければいいが。  留まるところを知らない、エディンの不安だった。

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