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第二十八章 憧れ

 馬とは違うラクダの乗り心地に、アルネの腰はようやく慣れてきた。 「初日は、お尻が痛くてたまりませんでした」 「ラクダにも、すっかり慣れたな」  エディンは笑顔で、彼の手を取った。  移動中は、革の手袋を着けている、アルネの手。  強い日差しと、手綱擦れを防ぐためだ。  手袋に守られた彼の手は、変わらず白く美しい。  だが近頃は、それに逞しさが加わってきた、とエディンは感じていた。 「では、良い夢を」  アルネの素手の甲に、エディンは口づけを落とした。  そして、王子専用のテントから出ていく。  こうした一連の流れが、砂漠を旅する二人の日課になっていた。

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