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アルネの手の甲にしかキスできない、と不満に考えるエディン。
だが一方で、アルネはそれすら喜んでいた。
「今夜も、キスしてくださった!」
そう思い、手のひらを大切に胸に当て、毛布にくるまって横になる。
大好きなエディンのキスなら、唇でなくても嬉しいのだ。
「それに。僕のことを、とても気に掛けてくださる」
今日も、日中に唇が渇いた時、すかさずオイルを手渡してくれたのだ。
『木の実を絞って精製した油だ。口に塗ると、痛みが来ない』
『ありがとうございます!』
『竜将閣下、我々の分は……?』
『すまん。次のオアシスまで、我慢しろ』
部下たちにはすまないが、自分を特別に扱ってくれる心遣いに、アルネは感謝していた。
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