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「冗談ですよ。この剣を抜かずに済むことを、祈ります」
「そうだな。何事も起きなければ、良いが」
「できれば僕は、人を斬りたくはないです……」
「斬らなくて、いい。アルネが、その手を汚す必要はないんだ」
「あっ、ごめんなさい。そんなつもりで言ったんじゃ、ないんです!」
人を散々斬って生きてきたエディンの哀しさを、アルネはすでに感じていた。
彼をさらに傷つけた言葉を謝り、背筋を伸ばした。
人を斬りたくはない、だが、名誉に思っているのだ、と補足した。
「この剣を手にして、エディン様に認めてもらった気がするんです」
一人前の王子として、王族の人間として。
「そして、このキャラバンの仲間として、です」
「ありがとう、アルネ。そう言ってもらえると、私も嬉しい」
また後ほど来る、と短く残すと、エディンは見張り場から去って行った。
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