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 敵が来る方角に背を向ける形で、エディンはアルネをかばっていた。 「どいてください、エディン様! 矢が刺さると、ケガをします!」 「少しくらいなら、平気だ」 「でも……でも!」  アルネの声には、涙が混じっていた。 (僕を助けるために、エディン様は……!)  必死でエディンの体から離れようと、アルネはもがいた。  だが竜将の腕は、しっかりと彼を抱きしめ動かない。 「アルネ」 「離してください! 僕をかばったり、しないで!」 「こんな歌を、知っているか?」 「う、歌!?」 「小さい頃、聴き覚えた歌なんだが」  この非常時に、なぜそんな呑気なことを、とアルネは思った。  しかしエディンの歌声が流れ始め、それを聴くうちに、彼の心は鎮まっていった。  穏やかに、落ち着いていった。

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