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 エディンは、裸でしゃがみ込み、うなだれている首領にマントを掛けた。 「すぐに服を用意させる。恥をかかせて、悪かったな」  そんな彼のマントは、ずしりと重く、鉄と血の臭いがぷんぷんしている。 (こいつ、こんなマントを身につけて。その上で、あんなに軽やかに動いていたのか)  重みは単なる質量だけでなく、エディンがこれまで背負ってきた業をも物語る。 (到底、俺様の手に負える相手じゃなかった、ってことだ……!)  全てを悟った首領は顔を上げ、エディンを見た。 「俺様の名は、バシリキ。よろしくな」 「私は、フェリックス・エディン・ラヴィゲール」 「長い名前だ! 覚えきれねぇぜ!」  二人で笑い合っていると、アルネが駆けてきた。 「服です。それから、毛布も。風邪をひきますよ、盗賊さん」 「ありがとうよ。盗賊さんは、もうやめてくれ」  バシリキとアルネの様子を、エディンは注意深く観察していた。  しかし、この元・盗賊団の首領には、アルネに対する敵意や色目は感じられない。 (これでようやく一安心、といったところか)  竜将は、人知れず小さな息を吐いた。

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