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「確かネイトステフでは、ダマビアを『希望の国』と呼んでいるんですよね?」 「そうだ。私の領地からも、大勢が移住している」  彼らの会話に、バシリキが目を開いた。 「そういえば、ネイトステフ王国の国境領だけが、ダマビアと交易してたな……!」  あっ、と彼はさらに目を剝いた。 「ネイトステフ国境警備を任されてるのは、第三王子! 竜将親分、あんた王子様だったのか!?」 「何を今さら」 「うわぁあ! 何か俺様、無礼者だったりするかぁ!?」 「よしてくれ。砂漠での経験は、バシリキ殿の方が上だ」  エディンは、バシリキを丁重に扱っていた。  部隊での役職も、上の方だ。  呼び方も『バシリキ殿』と敬称を使う。  そうすることで、彼の盗賊団内での面目を保ち、自尊心を傷つけないよう気を遣ったのだ。  バシリキもまた、そんなエディンの気配りに感謝し、存分に彼の力になった。  まさに、Win-Winの関係となっていた。

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