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 夜、見張りには部隊の軍人一名と、盗賊団から一名、合わせて二名が立つようになった。  仮眠も交代でできるので、ありがたいことだ。 「元・盗賊団と言って欲しいな。今は、キャラバンだぜ!」 「これは失敬。キャラバン『赤の鷲』の首領、バシリキ殿」  砂漠で最強を謳う『赤の鷲』が、竜将の部隊に合流した、とのニュースは、瞬く間に広まった。  まさに、鬼に金棒のエディンたちに、夜襲を掛ける無謀な盗賊はいない。  それでも念には念を入れて、エディンは見張りを立てた。  まだ噂を耳に入れていない盗賊団が、野営を狙う危険もあったからだ。 「それでも、アルネを見張りに立てずに済むようになったのは、嬉しい」 「あの坊ちゃんか。綺麗な顔して細っこいが、なかなか芯の強い子だな!」  私もそこに惚れ込んだ、とは心の中で返事をし、エディンはバシリキの寄こした酒を口にした。 (だからこそ、アルネを信じてダマビアへと向かってはいるが)  もし、それが裏目に出れば。 (彼があの国をやはり『悪魔の国』と罵るようであれば……)  その時は、二人の恋が終わる時かもしれない。  そう、エディンは杯の酒に映る自分に問いかけていた。

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