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「本当に、静かだ……」
ダマビアへ到着したアルネは、思わずそう呟いていた。
彼の知る砂漠のオアシスは、もっと賑やかだ。
木陰に広がる、賑やかな市場。
行き交う商人の、お喋り。
ラクダが憩い、イヌが歩き、ネコがまどろむ。
そして、子どもたちが歓声を上げて走る。
そんな光景は、まったく広がっていなかった。
「まずは、近くの宿へ行こう」
「エディン様……?」
だがエディンは、驚く様子も無くラクダを降りて手綱を引き、先頭を歩き始めた。
その足取りは、まるで迷う様子もない。
(エディン様は、この国を良く知っておられるんだ。きっと)
アルネも彼の後に続きながら、あたりを見回した。
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