172 / 372

2

「本当に、静かだ……」  ダマビアへ到着したアルネは、思わずそう呟いていた。  彼の知る砂漠のオアシスは、もっと賑やかだ。  木陰に広がる、賑やかな市場。  行き交う商人の、お喋り。  ラクダが憩い、イヌが歩き、ネコがまどろむ。  そして、子どもたちが歓声を上げて走る。  そんな光景は、まったく広がっていなかった。 「まずは、近くの宿へ行こう」 「エディン様……?」  だがエディンは、驚く様子も無くラクダを降りて手綱を引き、先頭を歩き始めた。  その足取りは、まるで迷う様子もない。 (エディン様は、この国を良く知っておられるんだ。きっと)  アルネも彼の後に続きながら、あたりを見回した。

ともだちにシェアしよう!