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 アルネの隣を歩くバシリキが、彼に向って声を潜めてきた。 「アルネ坊ちゃん、俺様の言った通りだろ? 見な、幽霊が歩いてやがる」  バシリキの視線の先には、ケープのフードを目深に被った女性らしき人影がある。  彼女はアルネたちから逃げるように、ふらりと路地へ消えた。 「あの調子で、ふらふらして。こっちと目を合わせずに、隠れちまうんだ」 「本当だ……」 「薬を手に入れたら、こんな所からはサッサとおさらばしようぜ!」  しかし、とアルネは思った。 (何もしていないのに、僕らから逃げるなんて。まるで、何かに怯えているみたいだ)  女性が隠れた路地の方を向いて歩いていたので、アルネは立ち止まったエディンの背中にぶつかってしまった。

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