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「ご、ごめんなさい!」 「いいんだ。それより、宿に着いたぞ」  エディンの声は、優しかった。  そして、その優しい声のまま、アルネに願った。 「どうか、驚くようなことがあっても、声を上げたり取り乱したりしないで欲しい」  エディンの言葉は、アルネに緊張をもたらした。 (これは、やっぱり幽霊が。いや、悪魔や化け物が出るのかな……!?)  しかし、エディンと一緒なら怖くはない。  アルネも彼に続いて、宿へと入った  代表して宿に入ったのは、エディンとアルネ、そしてロビーとバシリキだ。  エディンがカウンターにある鈴を鳴らすと、奥から探るようなささやきが聞こえてきた。 「……どちら様ですか?」 「フェリックス・エディン・ラヴィゲールだ。その声は、ソフィアか?」  彼の声と名前を聞くや否や、一人の女性が急ぎ足で現れた。 「失礼いたしました! フェリックス殿下、お久しぶりです!」  彼女と会話をすれば、この謎めいた国が少しでも解るかもしれない。  そんな風に思いながら、アルネは鼓動を速めていた。

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