178 / 372
3
一つ目の子どもの腕は、右へ左へと定まらない仕草を見せる。
そして、ようやく二人の手は重なった。
「お兄ちゃん、ありがと」
その嬉しそうな笑顔と、邪気の無い声に、アルネの緊張は少しだけ解けた。
「……怪我は、ない?」
「大丈夫だよ!」
小さな手は温かく、アルネの心にぬくもりを与えてくる。
「元気だね。名前は、なんていうの?」
「ルキアだよ。お兄ちゃんは?」
「僕の名前は、アルネ・エドゥアルド・クラル」
アルネの返事に、ルキアは楽しそうに笑った。
「長い名前! フェリックス様みたい!」
そこでようやく、アルネは気づいた。
(この子も、エディン様と知り合いなんだ)
だったら、怖くなんかない。
アルネの強張っていた心が、しなやかさを取り戻していった。
ともだちにシェアしよう!

