180 / 372
5
「しかしよぅ。無礼は、どちらかと言うとガキより、母ちゃんの方だぜ?」
バシリキは、尻もちをついたアルネを助け起こしながら、ぶつくさ呟いた。
「何を隠そう、この御方はテミスアーリン王国の第二王子・アルネ様だぞ!」
自分はアルネのことを『アルネ坊ちゃん』などと呼んでおきながら、大口をたたくバシリキだ。
「わ、私ったら、何てことを……」
「いいんです。僕は、怪我などしていませんし」
「どうしてそこまで、慌てたか。その理由を知りたいんだよ。俺様は」
ソフィアは、ためらいの視線を、エディンに向けた。
彼は、穏やかな表情で、ゆっくりとうなずいている。
そこで彼女は、そろそろと顔半分を覆っているフェイスベールを外した。
その素顔を、全てさらけ出した。
「あ……!」
アルネは、小さな声を上げた。
ロビーは槍を取り落とし、バシリキは叫ばないよう両手で口を素早く覆った。
ソフィアもまた、ルキアと同じく一つしか目を持たなかったのだ。
ともだちにシェアしよう!

