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「しかしよぅ。無礼は、どちらかと言うとガキより、母ちゃんの方だぜ?」  バシリキは、尻もちをついたアルネを助け起こしながら、ぶつくさ呟いた。 「何を隠そう、この御方はテミスアーリン王国の第二王子・アルネ様だぞ!」  自分はアルネのことを『アルネ坊ちゃん』などと呼んでおきながら、大口をたたくバシリキだ。 「わ、私ったら、何てことを……」 「いいんです。僕は、怪我などしていませんし」 「どうしてそこまで、慌てたか。その理由を知りたいんだよ。俺様は」  ソフィアは、ためらいの視線を、エディンに向けた。  彼は、穏やかな表情で、ゆっくりとうなずいている。  そこで彼女は、そろそろと顔半分を覆っているフェイスベールを外した。  その素顔を、全てさらけ出した。 「あ……!」  アルネは、小さな声を上げた。  ロビーは槍を取り落とし、バシリキは叫ばないよう両手で口を素早く覆った。  ソフィアもまた、ルキアと同じく一つしか目を持たなかったのだ。

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