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第三十八章 希望の国
「ダマビア人だって、テミスアーリンを良くは思っていません。私も、そうでした」
だけど、とアルネを見るソフィアの表情は、柔らかだった。
「だけどアルネ様は、ルキアに手を差し伸べてくださいました」
本当に、嬉しかった。
ソフィアは、膝に乗ったルキアの髪を撫でながら、言った。
「私たちはこんな姿ですので、異国人からの評判が悪くて」
一つ目のダマビア人に出くわすと、誰もが逃げ出すか、攻撃するかのどちらかだ。
攻撃されれば、ハンディキャップがある分、勝ち目がない。
「ですから、なるべく外の人とは関わらないよう、ひっそりと暮らしているんです」
時には、わざと化け物のふりをして、キャラバンを追い払っていた、ダマビア人だ。
もし、自分らが非力な人間だと解れば、きっと残ったわずかな国土も、侵略される。
そう考えた末の、悲しい奇策だった。
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