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「当時の薬師や医者は、おそらく不老の薬とモルフェの併用による副作用、と記録を遺しています」  目が一つ、指が二本しかない、異形の子。  そんな我が子を抱いて、両親は驚き、嘆き、苦しんだ。  しかもそれが、ダマビア国内全域で起きていることを知って、戦慄した。  テミスアーリンとの戦争で、国力が落ちているこの時に、原因を突き止める術はなかった。  お得意の薬の力で、治すこともできなかったのだ。 『薬物の乱用が、胎児に影響したと思われる』  そこまでで、研究記録は止まっている。  遺伝学は、まだ黎明期の世界だ。  この変異に立ち向かい、解明することなど到底できなかった。 「私たちは、この体を受け入れて。そして一日を懸命に生きるしかないのです」  ソフィアの言葉が、現在のダマビア全てを物語っていた。  

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