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 滞在の手続きを済ませ、エディンの部下たちは久々の宿泊を喜んだ。 「屋根がある!」 「涼しい~!」 「テーブルに、椅子に、ベッドだぁ!」  はしゃぐ彼らに、エディンは眉をハの字に下げた。 「おいおい。ほんの少し砂漠の野営が続いたくらいで、そんな……」 「エディン様は、並みの気力体力の人たちの気持ちを、もう少し解ってください!」  アルネにたしなめられ、エディンは顔を覆ってしまった。 (アルネに叱られた……!) 「とはいえ、ようやくダマビアに到着しました。ありがとうございます」 「いや、こちらこそ礼を言わねば。よく、ソフィアとルキアを受け入れてくれたな」 「最初は、少し驚きました。でも、ダマビアの歴史を知って、色々考えさせられました」 「もう『悪魔の国』とは呼ばないな?」  はい、とアルネの返事は明るい。  その明るさで、彼はエディンに顔を近づけた。  そして。 「今夜、忍んで参ります……」  真逆の艶で、そう囁いた。

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