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ほんの一ヶ月ほど会わなかっただけなのに、アルネの母はひどく体調を崩していた。
それでも息子の顔を見ると、あの優しい笑顔を向けてくれた。
「まぁ、アルネ。ずいぶんと逞しくなったようね」
そして、エディンには礼を言った。
「よく、アルネをここまで成長させてくださいました。フェリックス殿下、感謝いたします」
さらに、オアニアを歓迎した。
「遠いところから、お疲れさまでした。それも、私のために。よろしくお願いしますね」
そこで咳込み、すぐ横になってしまう母だった。
顔色が悪く、痩せていた。
そんな彼女の姿に、アルネは涙を隠して手を取った。
「母上。優れた鎮痛剤を、ダマビアから分けていただきました。これを飲めば、痛みが和らぎます」
「私、苦いお薬は苦手よ?」
場を和ませようと、精いっぱいの冗談を言う母が、逆に痛々しい。
「すぐに、絶対に、母上は元気になりますからね」
アルネは、そう母を励ますことしかできなかった。
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