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謁見を願い出ている人物が来ている、と聞いて、カテリーナは眉をひそめた。
「後にしてもらえないかしら? 今、忙しいのよ」
彼女はティータイムで、目の前にずらりと並んだプチフールを、どれから食べようかと思案中なのだ。
「しかしながら、足を運ばれた御方は、アルネ・エドゥアルド・クラル殿下にあらせられます」
その名前に、彼女はさらに不機嫌になった。
アルネが聡明なことは、彼が幼いうちから知っている。
為政者の座に収まっている自分に、意見しに来たのかと思ったのだ。
カテリーナにとってアルネは、ただの政略結婚の駒に過ぎない。
息子のハルパロスと早く結婚させて、自分の地位を盤石にしたいだけだ。
「ちょっと今は、会いたくないわね。やっぱり後にしてくださる?」
「ネイトステフ王国の竜将・フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下もご一緒なのですが……」
「フェリックス殿下?」
思いもよらぬエディンの名に、カテリーナの頭は忙しく働き始めた。
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