215 / 372

5

 謁見を願い出ている人物が来ている、と聞いて、カテリーナは眉をひそめた。 「後にしてもらえないかしら? 今、忙しいのよ」  彼女はティータイムで、目の前にずらりと並んだプチフールを、どれから食べようかと思案中なのだ。 「しかしながら、足を運ばれた御方は、アルネ・エドゥアルド・クラル殿下にあらせられます」  その名前に、彼女はさらに不機嫌になった。  アルネが聡明なことは、彼が幼いうちから知っている。  為政者の座に収まっている自分に、意見しに来たのかと思ったのだ。  カテリーナにとってアルネは、ただの政略結婚の駒に過ぎない。  息子のハルパロスと早く結婚させて、自分の地位を盤石にしたいだけだ。 「ちょっと今は、会いたくないわね。やっぱり後にしてくださる?」 「ネイトステフ王国の竜将・フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下もご一緒なのですが……」 「フェリックス殿下?」  思いもよらぬエディンの名に、カテリーナの頭は忙しく働き始めた。

ともだちにシェアしよう!