230 / 372
5
アルネの声掛けで、城中の人間が病棟の引っ越しに手を貸した。
『私も、この引っ越しには大賛成ですよ!』
『他ならぬアルネ殿下の一声ですから、腕が鳴ります!』
『仮王様には早く治って、為政を行っていただきたい!』
こんな嬉しい掛け声とともに、一週間と見ていた引っ越しが、何と三日で終わったのだ。
エディンはもとより、オアニアは驚き、そして感心していた。
「アルネ様は、臣下たちから慕われてるんだなぁ。いっそ、テミスアーリンの王様になっちゃえば?」
それには、アルネが慌てて彼の口を手で塞いだ。
「う、嬉しいけど、滅多なこと言っちゃダメです!」
「もがもぁは!?(な、なんで!?)」
うなずきながら正論を返したのは、エディンだ。
「この国は現在、仮王陛下とカテリーナ妃の、二つの勢力に分断されているんだ。どこに密偵が潜んでいるか、解らないからな」
納得のいかない表情の、オアニアだ。
しかし、彼以上にエディンの胸の内は、承服できない思いでいっぱいだった。
ともだちにシェアしよう!

