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 アルネの声掛けで、城中の人間が病棟の引っ越しに手を貸した。 『私も、この引っ越しには大賛成ですよ!』 『他ならぬアルネ殿下の一声ですから、腕が鳴ります!』 『仮王様には早く治って、為政を行っていただきたい!』  こんな嬉しい掛け声とともに、一週間と見ていた引っ越しが、何と三日で終わったのだ。  エディンはもとより、オアニアは驚き、そして感心していた。 「アルネ様は、臣下たちから慕われてるんだなぁ。いっそ、テミスアーリンの王様になっちゃえば?」  それには、アルネが慌てて彼の口を手で塞いだ。 「う、嬉しいけど、滅多なこと言っちゃダメです!」 「もがもぁは!?(な、なんで!?)」  うなずきながら正論を返したのは、エディンだ。 「この国は現在、仮王陛下とカテリーナ妃の、二つの勢力に分断されているんだ。どこに密偵が潜んでいるか、解らないからな」  納得のいかない表情の、オアニアだ。  しかし、彼以上にエディンの胸の内は、承服できない思いでいっぱいだった。

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