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「じゃあ、僕が抱っこしてあげますから。100数えるまで起きていられたら……あと一回」
「解った!」
すでに勝ったも同然、といった顔つきのエディンだ。
アルネの胸に頬を寄せ、その体を抱きしめた。
そして声に出して、1、2、と数えだしたが、アルネは彼を優しく包み込み、静かに歌い始めた。
「狭霧ふる港の町は、りんごの花咲く町。いつの日も匂い優しく、夢にぬれて漂いぬ……」
「22、23、24……」
エディンは、その子守唄にまどろみ、100数える間もなく眠りに就いた。
「お疲れさまです、エディン様。お引越し、ありがとうございました」
病棟が日当たりの良い国王離宮へ移されてから、アルネの母と兄・仮王は、どんどん健康を取り戻しているのだ。
「それもこれも、みんなエディン様のおかげですよ」
アルネは、そっと彼の額にキスをした。
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