259 / 372
4
窓を開けて風を入れると、カテリーナから放たれる香害が、和らいだ。
エディンはホッとして、少し深呼吸をすると、彼女に向き直った。
向き直って、驚いた。
カテリーナは、怒りをあらわにした表情だったのだ。
「どうかなさいましたか?」
「どうもこうもないわ! フェリックス、私と同衾なさい。これは、命令です!」
その剣幕には驚いたが、内容には呆れ果てるばかりだ。
「私に下知を下すことができる存在は、ネイトステフの王だけですよ」
そして、彼女のあからさまな誘惑を、これ以上受けたくはなかったので、こう付け加えた。
「それから、もう一人。私の想い人しか、私を動かすことはできません」
「想い人? やはり、ピュアなところがあるのね。千人斬りの竜将にも」
嘲笑うように、カテリーナは真っ赤な紅をひいた唇で囁いた。
「何も、夫婦になりましょう、とは言ってないわ。良いではないの、想い人がいても」
内緒にしておけば解らないし、と彼女は言うのだ。
ともだちにシェアしよう!

