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勝ち誇ったカテリーナだったが、エディンの頭には電撃のような閃きが走っていた。
(その手が、あったか!)
もちろんこれは、カテリーナの側近として、愛人として、今後を歩むものではない。
もっと素晴らしい、もっと素敵なアイデアだった。
(帰国を急かし、公爵令嬢との結婚を急かす兄上を、黙らせる方法が見つかったぞ!)
エディンはカテリーナから勢いよく離れると、口の端を上げた。
「せっかくの申し出ではございますが、丁重にお断りいたします」
「なんですって!」
さらに、ひらりと身をひるがえすと、大股でドアへ向かって急ぎ始めたのだ。
「ちょっと! どこへ行く気!?」
「急用を思い出しましたので、これで失礼します」
そして部屋から出ると、どこかへ行ってしまった。
「失礼します、って。ここは、殿下ご自身の客室じゃないの!」
きぃ、とカテリーナは、彼を罵った。
「ホントに、失礼な男だわ!」
悔しがっても、エディンはもう姿を消していた。
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