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エディンがカテリーナの誘惑を受けていた頃、アルネにもまた、訪問者があった。
「アルネ殿下。ハルパロス殿下が、お越しです」
「ハルパロス殿下が? どうぞ、お通しして」
アルネの部屋はエディンと違い、警護や身辺の世話をする侍従が控えている。
そんな使用人たちを、邪魔そうに肩であしらいながら、ハルパロスが室内へと入って来た。
手には、紙包みの小さな箱を持っている。
「君の部屋へ入るのも、久しぶりだな」
「そうですね」
愛想笑いを向けたアルネだったが、正直なところ彼の訪問は嫌だった。
(僕は、エディン様のことを愛しているのに……やっぱりハルパロス殿下と、結婚を?)
そう考えると、憂鬱な気分になる。
しかしハルパロスは、アルネの気持ちなど知ったことではなかった。
(この美しい『テミスアーリンの真珠』は、私のものだ!)
そんな思いで、意気揚々とやって来ていた。
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