264 / 372

4

 エディンがカテリーナの誘惑を受けていた頃、アルネにもまた、訪問者があった。 「アルネ殿下。ハルパロス殿下が、お越しです」 「ハルパロス殿下が? どうぞ、お通しして」  アルネの部屋はエディンと違い、警護や身辺の世話をする侍従が控えている。  そんな使用人たちを、邪魔そうに肩であしらいながら、ハルパロスが室内へと入って来た。  手には、紙包みの小さな箱を持っている。 「君の部屋へ入るのも、久しぶりだな」 「そうですね」  愛想笑いを向けたアルネだったが、正直なところ彼の訪問は嫌だった。 (僕は、エディン様のことを愛しているのに……やっぱりハルパロス殿下と、結婚を?)  そう考えると、憂鬱な気分になる。  しかしハルパロスは、アルネの気持ちなど知ったことではなかった。 (この美しい『テミスアーリンの真珠』は、私のものだ!)  そんな思いで、意気揚々とやって来ていた。

ともだちにシェアしよう!