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 断りもせず、ハルパロスは柔らかな敷布のひかれた長椅子に掛けた。  そして、自分の部屋のようにくつろいだ様子で、手にした小箱を掲げた。 「東洋の、珍しいお茶だ。一緒に飲もう」 「しかし、もう夜分です。今からでは、目が冴えて眠れなくなりますよ?」 「大丈夫。これは、ハーブティーだ。体を温めてくれるらしい」  では、とアルネは使用人を呼んだ。  彼に、淹れてもらおうと思ったからだ。  だがしかし。 「私が淹れよう。ちょっとしたコツが、必要なんでね」 「ハルパロス殿下の、お手を煩わせるわけには……」 「いいから、いいから! 私が、そうしたいんだ!」  彼の我がままには、幼い頃から付き合わされてきた、アルネだ。 (相変わらず、強引な御方だな)  そう考え、それ以上の口出しはやめた。  ハルパロスは、侍従に湯を用意させる間、にやにやと含み笑いをしていた。  企みを胸に、ほくそ笑んでいた。

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