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第五十四章 卑劣な罠
エディンは、カテリーナの誘惑を見事に跳ねのけることができた。
しかし時を同じくして、アルネもまた、彼女の息子であるハルパロスの誘いを受けていたのだ。
もっともこちらは、仕草や言葉によるものでは、ない。
下卑た笑いを必死で隠しながら、ハルパロスは持参した茶葉を使って、ハーブティーを淹れる。
この茶葉こそが、彼の秘策だった。
小箱を開けると、そこには二つの袋が入っている。
一方は、普通の茶葉。
そしてもう片方には、強い催淫効果をもたらす媚薬が含まれているのだ。
ハルパロスは自分用のカップに、何の変哲もない茶を淹れた。
アルネのカップには、妖しい媚薬茶を注ぎ、ニヤリとした。
(私のことが、欲しくてたまらない体にしてあげるよ。アルネ)
良い香りが部屋いっぱいに広がり、彼は何食わぬ顔をしてティーカップをトレイに乗せた。
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