269 / 372
4
「どうしたのかな? アルネは、物欲しそうなご様子だね」
「僕は……僕は……」
「キスしても、いいかい?」
「ハルパロス……殿下……?」
いや、違う。
アルネの目には、彼が愛しいエディンに見えていた。
ふ、とアルネの表情が緩み、笑顔になった。
そこを見定め、ハルパロスは彼をさらに近くまで抱き寄せた。
周囲の使用人たちが、息を詰めて見ている。
はらはらと、見守っている。
(アルネ殿下、一体どうなさったのですか!?)
(殿下、お気を確かに!)
しかし、見たところ主人に嫌がる様子が無いのだ。
しかも、相手がハルパロス殿下なのだ。
身分の高い者同士の行為には、口出しできないもどかしさが、侍従たちにはあった。
ともだちにシェアしよう!

