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第五十五章 怒りと制裁
ハルパロスが用意した媚薬入りのハーブティーを、何も知らずに飲んだアルネは、意識が朦朧としていた。
だが、周囲が騒がしいことは解る。
火照る体を持て余しながら、その声にぼんやりと耳を傾けていた。
『アルネは、嫌がってはいないんだ。私と彼は、愛し合っているから、キスを……』
『いいえ! 何か、おかしゅうございましたよ!?』
『そうです! ハルパロス殿下の淹れたお茶を飲んだあたりから、アルネ殿下のご様子が!』
『えぇい! お前たちは、黙っていろ!』
(この声は……ハルパロス殿下。僕の侍従たちと、言い争いを……?)
周りの人間を愛の証人にしようと企んでいたはずが、逆に悪事の告発者になっている。
ハルパロスは、舌打ちした。
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