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医師の胸ぐらを掴むくらい焦っているエディンに、医師は淡々と語る。
いや、医師も慌ててはいるのだが、ここで自分まで大騒ぎしては、アルネのためにならないのだ。
医療従事者らしく、冷静さをもってエディンに説明した。
「アルネ殿下は、うわごとでフェリックス殿下の名を呼んでおられます」
「えっ?」
『フェリックス・エディン・ラヴィゲール』
この名は、アルネにとってはお守りの呪文だ。
ハルパロスの毒牙から逃れるために、正気を失った今も唱えているのだろう。
エディンは、そう解釈したが、医師の見解は違っていた。
「フェリックス殿下の、ミドルネーム。エディン、と呼んでおいでなのです」
医師は、探るような目をエディンに向けた。
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