281 / 372
第五十七章 目覚めのキス
「私が、アルネの……つがい?」
「そうです。アルファとオメガが、ごく稀に出会う『運命のつがい』です!」
おとぎ話の中でしか知らない、運命のつがい。
普段のエディンならば、笑って受け流すところだ。
しかし、今は緊急事態。
その上、医師が大真面目な顔をしているのだ。
この夢物語を、信じないわけにはいかなかった。
「それで、私はどうすれば……」
「殿下を、愛してさしあげてください」
きっぱりと医師は宣言したが、エディンはのぼせた頭でも、さすがにためらった。
周りには、侍従たちが大勢いるのだ。
(人の見守る中、アルネを抱け、と!?)
「早く! アルネ殿下が、壊れてしまいます!」
「竜将閣下、お願いします!」
「お願いです、お助けください!」
医師も侍従も必死に叫んだが、エディンを動かしたのは小さな細い声だった。
ともだちにシェアしよう!

