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第五十七章 目覚めのキス

「私が、アルネの……つがい?」 「そうです。アルファとオメガが、ごく稀に出会う『運命のつがい』です!」  おとぎ話の中でしか知らない、運命のつがい。  普段のエディンならば、笑って受け流すところだ。  しかし、今は緊急事態。  その上、医師が大真面目な顔をしているのだ。  この夢物語を、信じないわけにはいかなかった。 「それで、私はどうすれば……」 「殿下を、愛してさしあげてください」  きっぱりと医師は宣言したが、エディンはのぼせた頭でも、さすがにためらった。  周りには、侍従たちが大勢いるのだ。 (人の見守る中、アルネを抱け、と!?) 「早く! アルネ殿下が、壊れてしまいます!」 「竜将閣下、お願いします!」 「お願いです、お助けください!」  医師も侍従も必死に叫んだが、エディンを動かしたのは小さな細い声だった。

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