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 アルネとエディンの口づけは、さほど長くはなかった。  ディープな熱いキスに移る前に、エディンが一度、唇を離したのだ。  寄り添う大切な人が、心配だったから。  かけがえのない人の心が、心配だったから。  そして、その名を呼んだ。  呪文のように、ささやいた。 「アルネ……アルネ・エドゥアルド・クラル……」  その声には、エディンの全霊が込められていた。 (どうか、無事に。アルネ、正気を取り戻してくれ!)  その想いに応えるかのように、アルネの睫毛が震えた。  うっとりと閉じた瞼が動き、ゆっくりと開いた。  

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