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「はい、そこまで!」
突然、医師が大声を上げた。
その声に、アルネはパッとエディンから唇を離した。
「え! レイモン先生!? あぁっ! それに、みんな!」
大勢の人間に囲まれた状態で、キスをしていたことに、アルネはようやく気が付いた。
「ぼ、僕ったら! 恥ずかしい!」
「恥ずかしがる時間は、ございません! まずは、検診を。必要ならば、解毒剤を調合いたします!」
「ハルパロス殿下は、東洋の薬と言っていました。我が国に、解毒剤があるでしょうか」
「オアニア殿に、相談いたしましょう。彼ならきっと、良い知恵を持っておられます!」
では、と医師を筆頭に、全員がアルネを囲んで医療宮へと移動し始めた。
「そ、そんな! 待って、皆さん! え、エディン様ぁ!」
「先に行ってくれ、アルネ。私もすぐに、医療宮へ向かうから」
「絶対、ですよ!」
「絶対に、行くから!」
アルネと医師たちが去った後、エディンは一人ぽつんと残された。
だが、笑顔だ。
「さて。急いで兄上へ、手紙を書かなければ」
まだまだ、ネイトステフへは帰れません、と!
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