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「食事を残した、と聞いたぞ」 「叱らないでください。だって、ずっと部屋に籠りっきりなんですよ?」  体を動かさないので食欲が湧かない、とアルネは唇を尖らせた。 「果物を持ってきた。食うか?」  エディンは、手にした袋の中から、丸い果実を取り出して見せた。 「わぁ! それ、僕が大好きな果物です!」 「食べにくいかな。小さく、切ってあげよう」  エディンは片手に果実を持ったまま、腰の長剣に腕を伸ばした。 「まさか……その剣で?」 「冗談だ」  珍しいエディンのジョークに、笑うアルネの表情には暗い影が見られない。  それだけでエディンは安心し、ベッドサイドへと足を運んだ。

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