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「結構です。今ここで、教えてください」
オアニアに、アルネはしっかりとした口調で言った。
この一週間、ただ寝てばかりいたアルネでは、ない。
王族の一人として、カテリーナ妃やハルパロスに、政治を全て委ねることは危険と感じていたのだ。
しかし、兄である仮王は仮死状態、母はその世話に付きっきり。
(後は、僕が頑張るしかない。ここで、踏ん張るしかないんだ)
アルネは、そんな決意を固めていた。
政治に参加する覚悟を、決めていた。
国家予算を把握し、国民の生活水準を知り、今期の穀物などの出来具合を計る。
そういった、為政者がまず頭に入れておくべき基本データを、侍従たちから聞いていたのだ。
アルネの凛々しい眼差しに、オアニアはうなずいた。
「アルネ様の、お兄様。つまり、仮王陛下に毒を盛り続けた者を、突き止めたんだ」
それは、波乱の予感を含んだ言葉だった。
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