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「ハルパロス様は、アルネ殿下を我が物にするため、外国産の薬物を使用しました」
今度は、アルネの専属医師が証人だ。
大量に摂取すれば死に至る薬を、臨床試験もなしに飲ませた、と憤慨している。
「たとえ暗殺が目的でなくとも、アルネ殿下のお命を危険にさらしたのです!」
この事件の顛末は、エディンや侍従など多くの目撃者がいる。
媚薬の成分と働きについては、オアニアが検証済みだ。
法務大臣は、一言も喋らずうなだれているハルパロスに、言い渡した。
「ハルパロス殿下を、アルネ殿下暗殺未遂の実行役とします」
息子共々、不名誉な罪を申し渡されるカテリーナは、唇を血がにじむまで噛みしめた。
「それで!? 私たちを、どうなさるおつもり!?」
最後の最後、頼みの綱は、自分が亡き先王の正妻であることだ。
ハルパロスは、その第一王子であることだ。
だが、法務大臣は厳しく言い渡した。
「宮廷警備隊および法務省は、両名に死を以て償われることを望みます」
「なッ……!」
さすがのカテリーナも絶句した。
青くなって、震え出した。
だがしかし。
「その処罰は、却下したいと考えます」
凛と張った、声。
アルネが、真っ直ぐなまなざしで、異を唱えていた。
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